最高の推しを最高の写真にする方法2 #構図理論編
●写真は何から始めたらいいのか?と考える
最近カメラを始める人が増えてきました。そこで何か役に立てないかなと思ってこのシリーズをはじめました。現像の次は「構図」の話をしようと思いますがその前に。
ライブ写真についてまともな教則が多くないというのはよく聞くところ。カメラ始めようとした人がだいたいぶつかる壁です。ライブ現場が撮影場所としてあまりに過酷、特殊なため、書き出したらキリがないのもあります。機材はどんなのがいいのか?設定は?このあたりもそれぞれの予算もあるので難しい。ですがこの記事は入門者向けな側面もあるのでこの辺をざっくり書いておきます。
→機材は何がいいのか?
デザインでもスペックでも「自分が愛着を感じられそうなもの」をインスピレーションで選んで良い。一眼レフ機、どれもそれなりに優秀なんで買えばだいたいなんとかなる。好きになれる相棒でさえあればその底力を出せるように学ぶモチベにもなる。
→もうちょい詳しく言え
一般論ですがCanonのほうがNikonに比べて女の子を綺麗に撮れる。一方でNikonの方がAFスピードや精度は良いとか。あと頑丈。動画もやりたいとか小型で優秀なのはと言われればSony。
→ミラーレスはどうなの?
違いはロマンしかない。小型だし良いことのほうが多い。でも一眼レフ光学ファインダーで推しを覗くのは楽しいぞ。
→レンズは?
とりあえずレンズキットの万能ズームで良い。本気でやりたくなったらとにかく明るいやつを。F2.8 70-200ズーム、中古で良いからもっておくと捗る。僕はこれしかもってないです。明るい単焦点レンズとの組み合わせればだいたい撮れます。
→設定は?
シャッタースピード250、絞り開放、ISO上限6400くらいの自動設定でまず撮ってみよう。箱によって、自分の機材によって適正値は異なります。場数場数です。6400は高いという説もあるけど、個人的にはまず写る状態の体験が大事だと思ってて、許容ノイズは機材と箱で自分で調製するしかないと思う。本当は3000くらいにしたいですね。グループ全体にピントが来るようにしたい時、会場の奥までピントがくるようにしたい時は絞りを変えていきます。絞るほど(数字がでかくなるほど)奥までピントが合うようになりますがその分暗くなるのでSSを下げたりして組み合わせて運用します。
→気をつけることは?
フラッシュとAF補助光OFF。あとは頭より上にカメラをあげない。前の人にズームをぶつけないように注意。本当に撮影可か確認。沸くときは沸こう!撮ったらSNSにアップしよう!
以上です。カメラおじさんはこの話だけで無限にブログ書ける人の宝庫なのでそっち参照がいいです。絞りってなに?みたいな話も無限に解説されてるので興味のある人は見ると良いです。ここではその辺は飛ばします。というか僕はそっちはあんまり詳しくない…。下記とか読むといいよ!
●しかし初心者に伝えるべきことは機材に依存した話では意味がない
買う機材はなんとなくわかった。でも同じ機材じゃなきゃそうならない、というような話がライブ写真入門ブログのほとんどであり、「写真」そのものをちゃんと解説しているものはほとんどない。特にライブ写真が上手い人とそうでない人、何が違うのか?「機材ではなく愛」とか言ってみんな誤魔化してしまいます。これもまた仕方ないのです。ライブ写真は撮影者が意図的にできることが限られている。推しの魅力が9割。でも残り1割は機材の差だけなのだろうか?愛の差なんだろうか?
●愛はみんなあるはずである
この文章のターゲットは推しを持っているライブカメコさんであり、愛はみんなあるはず。だから違いは「愛」だけではない。ではセンスか?それでは話が終わってしまう。ここからが本題です。写真の良し悪しを左右する要素残り1割をめぐる撮影者の悪足掻き。またしてもクソみたいな長文でお届けします。
●偉そうに言っておいてなんですが僕はセンスがない
最初に言っておくと僕には「絵的センス」はありません。絵も描けないですし、写真だって勉強するまでは恐ろしく下手でした。今でこそいろんな方に褒めていただくことが増えましたがとても時間がかかりました。でも時間がかかった分、誰でも「センスがいい風」になる方法をいろいろ考えました。その一つが現像であり、そして今回の主題である「構図」の考え方です。ですが、あくまでセンスがない人間がどうにかする方法なので、センスがいい人は読まないほうがいいかもしれない、そんな理屈っぽくてうざったい、センスに頼らない構図論。
●写真=構図と言い切って過言ではない
とよく言われます。上手くなりたければ構図!そこで多くの人が「構図解説本」を買ってみたりします。だいたいは見本帳のようになっていて、日の丸構図、対角線構図、額縁構図、三角構図などの都合の良いサンプル写真が載っており、なるほどこういうもんかという感じになる構成となっています。
しかし、我々はライブカメコです。被写体は我々の意図とは無関係に動き回る上、撮影者の位置やカメラの構え方すら思うままにはなりません。構図のお手本のような見事な樹木の写真を見せられたとて、推しは木じゃねーんだ、というしかない。気楽でいいよな木は!です。ポージングやフレーミングを自由に指示できるポートレートも同様です。そんなことができるのはチェキだけですよね。それ以上に…これらの本を見て十数種類の構図のお手本を見せられてまず思うのは「写真って窮屈でつまらないんだなー」じゃないでしょうか?
●そもそも「なんのために構図が必要なのか」はあまり解説されない
見本帳の構図というのはあくまでわかりやすいサンプルの一つにすぎません。型に押し込めば星型のクッキーが焼けちゃうよ、と言ってるにすぎない。そもそも「構図ってなんだろう?」「なんでこの通りのやるのが良い写真なんだろう?」それに対してあまり語られることはありません。
●「構図」とは「人為的な意図」を写真に持ち込むための手法である
写真というのは極言すれば、四角形で特定の風景を切り取る行為です。ただそれだけの作業です。切り取られる対象の風景そのものは、撮影者のために用意されたものではない、というのが本来です。そう。フレームを外したその向こう側にあるのはただただ無軌道で自然に任せたカオスなのです。このカオスの一部を切り取ることで、我々はそれを記録に残し、そしてその一枚を見る者になんらかの意図を伝えようと試みます。「本当は誰の意図も存在しないものに意図を感じさせるもの」、それが構図とは何か?という問いへの答えになります。下の写真にはいったいどんな意図が潜んでいるでしょうか?
この画像を見た人がまず思うことはなんでしょうか?宇宙人の仕業か?あるいは米軍の秘密施設か?何者かがなんらかの意図をもって製作したものだと思うでしょう。ミステリーサークルのように。しかし、本件の答えとしてはこれは完全に自然現象です。神秘ですね。
ここで大事なことは、神秘的な氷山の謎ではなく、結果的に自然現象だったとしても「整った長方形」に対して人間は、特段の根拠もなく、どこか人為的だと感じるということです。よく考えると不思議ですが、人間はそのように感じるようにできています。
「写真の構図」も実はこれと全く同じメカニズムを利用し、「本来意図のないものに意図を託す」ために編み出された手法だということ。すなわち、写真の中の構成要素に単純で幾何学的な一定の法則を感じる時(あるいは「あえて」それを外す時)、人間はそこに撮影者の人為的な意図を見出します。そしてその意図を感じるがゆえに、それを考えようとしてその写真に引き込まれていく。それが「魅力的な写真」と言われるものに繋がる第一歩なのです。すなわち「センス」という曖昧かつ高尚なものがなければできないもの、では決してないのです。
●「良い写真」は偶発的だが「ちゃんとした写真」は量産できる
さて、ここで話を戻します。ライブ写真における「良い写真」の定義はなんでしょう。難しい問題です。推しの魅力的な表情の瞬間を捉えたもの、そのライブでだけあった出来事の瞬間などなど様々ですが、いずれもそれが撮れるかどうかは偶然性に左右されます。このような素晴らしいシャッターチャンスをモノにできた時、それはきっと構図理論も機材も越えた反響を得ることができるでしょう。しかし毎度、運頼みでは「撮れない」ことのほうが多く、趣味としてのモチベの維持は難しくなるかもしれないですよね。
ですが特別なシャッターチャンスでなくても、構図が整理されていて撮影者の意図が伝わりやすい「ちゃんとした写真」をコンスタントに撮ることができれば、大当たりでなくても常に人に見てもらいやすいものを継続することができます。そしてそういう写真というのは、ちょっとした意識をするだけで、誰でも、特別なセンスがなくても「撮れるようになる」ものなのです。もちろん、機材そのものを使いこなす、というのもその大事な要素ですが、それ以上に「構図意識のある写真」であることが、それを可能にする近道なのです。
●「型通りの構図」にはめ込むのではなく、構図の要素を被写体から見つける
そろそろややこしくなってきたのでまとめましょう。
・構図とは人為的な意図を伝えるために必要なものである
・人間は単純で幾何学的な配置に人為的な意図を見出す
・意図が明確な写真は特別な瞬間でなくても目を引きやすい
何1つ想い通りにはならぬライブカメコは千変万化する現場の中で、最初から型通りの構図を狙って撮ることはできない。しかし型の意味を理解し、フレームの中で自由に動く被写体から構図要素を見つけてレイアウトを考えれば限りなく同じような効果を期待できるはず。それが今回の記事の主題です。
●ではやってみましょう。
改めて強調しますが
・人間は単純で幾何学的な配置に人為的な意図を見出す
つまりすなわち、写真の中に幾何学的な法則をいかに入れられるか、が整った構図の写真にする第一歩です。
具体的にはフレームの中に下記をいかにいれられるか。センスに頼らない構図論のスタートです。
A
・垂直線
・対角線
・平行線
・斜線(三角形)
これらの線が写真の構成要素(背景含む)にどれだけ作れるか。
B
・中心点とフレームを分割(9分割)した時に、分割線の交差点である4つの点、この5点のいずれかに強調したいポイントが配置されているか。
この4点は中心に次いでグリッドが引かれなくても人間が無意識に法則性を感じやすく、意識が向きやすい点と言われてます。
その他、黄金比とかフィボナッチ数列がどうたらとかいろいろありますが、それをやりだすと説明が死ぬのでAとBに絞ります。
●ライブ写真は「マイクの角度」をまず整える
現像の時にお世話になった写真で解説します。マイクの重要性です。
この写真、非常にシンプルに見えるのですが、上記を意識的に取り込んでいる幾何学ラインがこれだけあります。
偶然だろ?と思われるかもしれませんが、そうではなく。こうなるように実は後でクロップして微調整しています。
①マイクの角度を基準とした対角線ライン
実はライブ写真において、もっとも「人工的な物体」はマイクです。マイクの角度というのは写真の中で想像以上に大きな存在感があります。そして対角線もまたフレームをど真ん中からぶったぎる、非常にパワフルで写真をエネルギッシュに見せるライン。ど真ん中を対角線に横切るなんてことは人為的でなければ都合よくなりませんから、マイク一本の角度一つで、この写真が撮影者によってコントロールされたものであることを無意識に印象付けています。何はなくともまずマイクを見ろ、これは結構覚えておいて損ないです。黒バックを対角線でぶった切るマイクに、空間を切り裂くようなエモーションを込めました。
②上辺中央からマイクを持つ腕、バックの他メンバーの腕を繋ぐ二等辺三角形ライン。
三角形は安定した印象を与えます。ピラミッドに代表されるように安定した土台と高く伸びるこの図形は古来より、バランスの象徴とも言われてきました。中心に三角形ラインを意識することで、エモーショナルながら安定した歌唱を印象付けています。ただし、見るとわかる通り、本来は左側に全体を寄せて三角形内に体をおさめたほうがより安定するのですが、少し位置をズラすことで彼女らしい前のめりな印象を強めています。
③マイクの対角線上方の光芒による対角線平行ライン
④逆向き対角線
この辺は本当に結果論ですが、これがあったので光芒を強調する現像処理をかけています。被写体頭部を頂点として覆うような光芒は美しかったので。「平行」というのも極めて人為的な存在であり、意図するところを強調する効果があります。
⑤マイクの中心に分割線の交差点
中心の口元から伸びるマイクの中心に交差点をあわせることで歌声に主題があることを印象付けています。
このようにグリッドを引くと一定の狙いでこの写真の角度や画角を調整してる、ように見えたらいいな…ややこしいかな…と話が複雑怪奇になったのでもう少しシンプルな例を。
↑これのポイントも「マイク」です。ここではマイクが完全に水平になるようにかなり細かくあわせています。当たり前ですが、写真を構成する直線の中でもっとも強力なのは写真をトリミングするフレームそのものです。このフレームに対して平行な線は当然非常に強い印象を与えます。この写真ではさらに分割線ともきっちりあわせることでその意味合いをさらに強めています。ちなみにフレームに対する平行線の効果はフレームに近いほど増し、力強い印象になります。
ここでマイクの水平にこだわった理由は、被写体のまっすぐな目線と同期するからです。全体として真正面を見据えて歌う姿を印象付けるのにマイクをまっすぐ突き出す構図にしました。さらに腕と背中の平行、下辺フレーム中心を頂点とした逆三角形など、幾何学要素も見極めて瞬間を押さえています。
ここで大事なことは、マイクは水平ですが背景を見ればわかる通り、この写真そのものは別に水平ではない、ということ。実際の地面に対して水平かどうかよりも写っている構成要素をどういう法則で置くべきかを優先しています。我々は被写体にポージングの指示も、動きの静止の要請もできませんし、自分自身の位置さえも自由にはできない。カメラのフレームだけが唯一コントロールできる武器です。斜め写真を気にする方も多いですが、地面に対しての水平にこだわりすぎることは、その武器さえも制約してしまうリスクもあります。
↑ここまでくるとなんとなく見えてくるのでは?と思いますがこちらも。対角線マイク、頭部を頂点とした三角形と腕で作る三角形の二重構造。抜群の安定感の一枚です。
●腕、目線、体の軸、あらゆるところに幾何学は見いだせる
↑歌う姿、踊る姿の中には無数に幾何学が発生します。マイクそのもの、腕そのものだけでなく、目線や腕と腕の隙間の空間など様々な場所に見てとれます。これらを最大限見つけ出し、フレームの中にレイアウトすることで、その写真が持つ意味が大きく出てきます。
●「背景」を最大限活用する
ドアップの写真を除けば、写真の面積の内、背景が占める割合は極めて大きいと言えます。ここまでの考え方を背景にも活用することで写真全体をまとまった印象にできます。
↑これはLOFTのロゴを生かした例、ロゴの角度が対角線に乗るようにしつつ、肩は水平にしています。画面全体は斜線を描きながら、被写体自体は正面に意識を向けている、角度のコントラストを意識した写真です。
↑これは生かしたというほどではないですが背景のラインと体の角度に一定の意味が発生するように細かく調整してるのがわかると思います。
●集団になっても考え方は同じ
↑集団写真になっても考え方は同じです、リレーをするように線を繋ぐイメージで構図を組むとまとまった雰囲気が出せると思います。広角になるほど見出す幾何学模様は増えるので、その中でどこを選択して強調するか、撮影者の意図が試されていきます。
ということで、理屈っぽい前置きが長くなった上に言葉にするほど複雑怪奇になってしまうのでこの辺でまとめます。
ライブという思い通りにならない被写体を「構図」概念に落としこみ、「ちゃんとして見える」写真に落とし込む方法。
●主題要素を中心、もしくは9分割の交差点に据える
●被写体の中でもっとも印象が強い直線ライン(マイク、腕、体、背景、ライティングの光芒、背景)を見つける
●それがフレームの中で幾何学的な意味を持つように精密に配置して画角を決めることに集中する
●斜線(エネルギッシュ)、水平・垂直(安定感)、三角形(バランスの良さ)、など線の質によって得られる効果を意識する
●現場で決めきれなかった場合はクロップや回転によって微調整を行い、かぎりなく精度をあげる
●主題となる要素に関係のない要素(見切れてしまった他メンバーなど)もクロップで削り要素を整理する
を基本とします。これらをある程度満たした写真にした上でさらにあえて主題をズラした位置に置いたりするとそこに違和感が生まれ、観るものの興味を惹きつける写真を作ることもできます。
たとえば、ホラー映画では登場人物を主題要素を置くべきポイントからズラして配置した構図を取ることがあります。観客の眼は無意識に人物の後ろの空間に意識が行き、何か恐ろしいものが背後から迫る恐怖を感じます。これもそうした効果の一つです。そのあたりからセンスが物を言う世界になるのかもしれません。
ライブ写真には一般的な写真教本における構図丸暗記型は必ずしも通用しません。しませんが、その意味と効果を理解し、必要なポイントをおさえることで、漫然と撮った写真ではなく、撮影者の意図がより伝わる写真にすることができます。めちゃくちゃいい写真になるわけではありませんが、安定してそこそこの撮れ高を出せるようにはなるはず。
しかも、この効力はたとえ機材がスマホであったとしても有効です。ちょっとした一手間で、機材に依存せず、あらゆる環境で撮れ高をあげられる上に一切お金がかからない。意識して損はないと思います。きっと写真が変わります。
理屈っぽい話だったかもしれませんが、推しの魅力は誰が撮っても変わらずそこにあるもの、より伝わるようにすることしかライブカメコにできることはありません。そんな一工夫の一つとしてもらえたら嬉しいです。
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