最高の推しを最高の写真にする方法3 #光と色彩編


●前回までのあらすじ

 本稿は下記テキストの内容が前提になっております。非常にクソ長い反面、誰もが無意識にやってることの言語化が大半で撮りなれた方にとって目新しい内容はたぶんそんなにないです。

 

 写真界隈特有の思わせぶり一行解説や3分クッキング的動画解説風でもなく、専門的で難解なものよりもうちょっと大味な…センスがない私がセンスがある風をすべて理屈で再現するために考えてきた「そもそもいい写真って何?」から始めるスーパー冗長全ブッコミ解説シリーズです。



●意識的に見ているのは被写体だが、無意識の感情に訴えるのは色彩と光である

 今回はライブハウスという空間を非日常たらしめているものとしての色とりどりのライティングを画に落とし込むことの意義について。そんな光と色彩のお話です。


 ライブを撮るときに多くの撮影者が意識するのは推しの表情であり、動きであり、写真を見る人もまた観たいのは被写体そのものだと思います。特にアイドルが被写体である場合にはその比重はかなり高いでしょう、なんせ推しは可愛いですからね。

 しかしながら、情景という視点でいうならばその写真をドラマティックに見せているのは光と色彩です。かのレオナルド・ダ・ヴィンチ曰く、「絵画の構成要素の優先順位は光・闇・色彩・形状・遠近の順である」。写真においても示唆に富んだ言葉だと思います。

 なぜならカメラを使って撮影するということ、これはすなわち「光を捕まえる」という行為そのものだから。フレームを「推しを捕まえる虫取り網」に例えたりしますが、被写体そのものだけでなくそれを照らし出す光と闇と色彩ごと的確に捕まえられたなら、被写体の魅力も最大化できるはず。

 ここで一つ、この動画を観てください。人物の顔がライティングと色彩でどれほど印象が変わるのかを示した映像作品です。たまに一時停止などして比較するのもいいと思います。
 光源の角度と色彩の違いによって人物の雰囲気や表情の情感が大きく変わるのがお分かりいただけるのではないでしょうか?

 写真において被写体の表情や存在感が大きかったとしても、光と色彩が違えば直感的に感じる雰囲気は大きく変わります。故に映画やドラマなど人物の感情を表現するメディアでは登場人物の心理描写にこうした演出が随所に盛り込まれていますよね。少なくもSNSのTLをスクロールする一瞬においては表情そのものよりもインパクトが大きいかもしれません。

 当然、プロのカメラマンはこのことを熟知しているので、たとえばスタジオであれば写真にどんな印象を与えたいかによってライティングを事細かに設定したり、野外においては太陽の位置を計算し、レフ板などを使って光をコントロールして狙った光を作ります。


 しかしライブ撮影をする人間は自分の意志でライティングを制御することはできません。その代わりに一つのライブ演出の中にはスタジオワークで意図的に作ろうとしたらとてつもない手間がかかるであろう多彩なライティング環境が存在し、実に短い時間でそれらを撮影することが可能です。制約の多さのほうが話題になりますがそもそもすごい贅沢なことなんです。


 単に被写体のみを追うだけでなく、あたかも狙ったかのようなハマったライティングの瞬間を見極めて撮影する、という発想の転換ができれば、ライブ写真は単なる記録写真ではなく、ステージの魅力を最大化して情感を伝える写真へとアップデートすることができるはずです。そこで具体的に、狙うと良いスチル向きのライティングパターンをいくつか紹介したいと思います。


●プレーンライト


 一般的な定義では前方斜め45度付近から光が顔を照らしている、肖像画などで多いライティングです。音楽室のベートーベンとかのアレ。光そのものが被写体全体に行き渡っており、顔の一部分にだけ影が落ちます。フロントライトが十分な球数を用意しているような環境、全体に光が行き届いている大きな会場では意外に発生しにくいのですが、特に横長のステージの小さい箱の時、端っこにいるメンバーを照らす光によってよく発生します。かなり雰囲気が出るのでチャンスです。
↑光源との距離によって陰影の濃さやコントラストが変わる。光が近いほど影のコントラストは強くメリハリがつく。立体的で表情に説得力が出るため、演者の存在感を伝えたいときに有効である。


●フロントライト


 プレーンライトにかなり近いですが、真正面からそれなりに強い光が当たってる状態のライティングです。リリイベ環境などで多いです。

 

 影はほとんど出ません。したがって立体的な存在感はあまり出ず、表情などの情感を伝えるのには向いていませんが、衣装などの形状や色を際立たせたい時に有効です。真正面から十分な光があたり、陰影もで出にくいことから「単純に綺麗に撮る」という意味では歓迎されやすく、スマホも含めて機材依存度が低いライトです。逆にいえばこうした光があたりやすい設計のライブハウスはアイドルなどのライブが多く、女の子が綺麗に見えるように配慮しているといえるかもしれません。実際、そういうコンセプトの箱もあるとかないとか。顔に陰影が出にくい、ということはスチルで撮るのが難しい表情の一つである「笑顔」も可愛く写りやすいです。

↑情感のような面白みは少ないものの「綺麗に写る」という観点からはほぼ無敵の光。
↑そもそもの被写体の強さはさておいても笑顔が綺麗に写るアドバンテージはものすごい。


●エッジライト


 このあたりからライブハウスならではの光になります。被写体の後方もしくは側面からかなり強い光源が当たった時に発生し、かつ全体があまり明るくない状況で発生します。具体的にはバックライトが演者の後方に重なった時やスポットライトの端に演者が少し外れたときに生まれます。輪郭がライトによって輝き、浮かびあがるようなライティングで、特に女の子の場合は髪の毛が輝き、非常に神々しい印象の写真となります。これが現場だとうっとりするほどキレイなんですよな。
 
 前述のように強い光源と位置がマッチした時にのみ発生するため、シャッターチャンスは長くはありません。また全体的な光量がある大きな箱ではあまり発生しないので、小さなライブハウス特有の画の一つです。
↑顔自体が見えなくても輪郭が強調されることから存在感がある写真に。
↑レッドのカラーライトが髪の毛の輪郭を作っている。全体的には暗く、背景に溶け込んでしまうところがしっかりと浮かんで存在感が出る。ブルーの衣装とのコントラストもキレイ。
↑髪の片方だけエッジライト。アシンメトリーなバランスがつくだと単なる正面写真にも情感が宿る。
↑皆既日食型エッジライト。全体が暗い時に一定の距離がある後方から強い光が来た時に演者が完全にそれを覆うと発生。文字通り輪郭をなぞる光。
↑髪だけでなく体の一部分が照らされるのを捕らえることも。ちょっとフェティッシュな印象に。
↑全体が暗くて何も写らない!という時でもわずかな光を捕らえれば輪郭が立った意味のある写真になることも。暗くとも光を丁寧に追うと面白い。

●逆光 


 一般的な写真においては逆光はあまり良い光源ではありません。しかしライブにおいてはそれも非日常的なワンシーンのエッセンスです。


 ライブ写真における逆光の生かし方は大きく2種類です。一つ目は全体の光量が大きくてかつ逆光であるもの。非常にまばゆい印象を与える写真になります。その分、被写体そのものの情報もステージの雰囲気も大きく飛んでしまい、雰囲気は出ますがあまり伝わらない写真になってしまうことも多いです。

 二つ目は全体が暗くてかつ逆光。逆光の良さはシルエットが立つことなのでこちらがどちらかというと本道です。被写体の表情やディテールは影になってしまいますが、その分、シルエットのカッコよさだったり、かすかに見える表情のミステリアスさだったり、鑑賞者の想像をくすぐる写真になると言えるでしょう。特に躍動感あるダンスカットなどは表情が事故ってしまうことも多いのでシルエットに落とすことで動きの美しさだけ画にするなども。

 光源を被写体で隠すか出すかでも趣きは異なり、その位置によってエッジライトになったりもします。光と闇のバランスが逆光写真のバリエーションを作ります。

 顔や全身に影が落ち、シルエットが強調された写真はその後光効果によるカリスマ性などにより、バンドライブ写真などでは非常に好まれますが、反面、限られた情報量からそれを汲み取るのはコアファンだけであり、よほど魅力的なシルエットを描かない限り、内輪ウケでどこにも届かない写真になりがちでもあります。撮る側も選ぶ側も意識しておくべきことかもしれません。
↑客観的に観て、伝わる写真なのかどうか、究極的には撮影者にはわからないものではあるかもしれない。また強力な逆光にレンズを向けてもファインダーで被写体を完全に認識することはできないため、演者を信じる気持ちがこれらの瞬間のシャッターを切らせるとも言える。
↑ジャンプアクションは事故写率が高く、世に出しにくいケースが多いがシルエットにすることで躍動だけを抽出することもできる。全力でシャウトする顔、なども同様の効果が期待できる。
↑メンバーのみならずフロアのファンに対しても有効。シルエット化することで個が立ちすぎず風景として一枚になる。ライブ中にファンが逆光で全身写る、などということは通常そんなにないが、振り上げる拳などシルエットに落とすことで主張しすぎない情景に取り込むのは有効。
↑シルエットではなく眩さを強調した例。強烈な後光で撮ってる時は何も見えない。ただしちょっと位置を動いて被写体の後ろに光源を隠すと全然違う写りになる。当たり前だけど面白い。
↑逆光と言っても応用は様々で光をどの部分で隠すか、それが髪ならば髪だけを光らせるという効果も。エッジライトとも違う印象を与えるもの。
↑光量やフロントライトのバランスによっては必ずシルエットになるわけではない。柔らかな夕日を背にしたような黄昏を描くことも。
↑光源を被写体で隠すか出すかで位置を微調整。いずれが良いかは好み次第だが、被写体を動かせない分、撮影者が動いて被写体と光源の位置関係を調整するのはライブ撮影に許された光源位置調整の有効な方法だ。


●アンダーライト


 文字通り下からの光です。不穏、不敵、挑発的なイメージが強くなります。あまりこの状況が発生することは多くはないのですが、比較的大きな会場では稀に発生します。アップ写真の中でほどよい角度のアンダーライトは日常では稀な光だけに強い意味合いを帯びた情感を演出します。
↑純粋なアンダーライトが当たるケースはあまり多くはない。少なくともライブハウスでアンダーライトを備えているところは限られるだろう。
↑超例外がギャンパレのバンドライトが作るアンダーライト。意外に面白い光源になることが知られている。


●スポットライト


 舞台ライティングの基本的なものの一つです。メインの被写体だけを光源が切り取るため、テーマがわかりやすい写真になりやすいのでシャッターチャンスと認識している人も多い瞬間だと思います。


 しかし、実のところ、ライブハウスのライティングはこのスポットライトが無数に方々を照らしている状態であり、その光源に対してメンバーがどの位置にいるかで、あがる絵の雰囲気はかなり変わります。前述のエッジライトも実際はこれの応用として浮かぶ場合も多いですね。
 
 うまくハマれば天使が降臨したような神々しい写真にもなりますが、一方で近すぎるスポットライトはその強烈な光量ゆえに白飛びしてしまう可能性が高いです。狙う場合にはアンダー気味に撮るなど対応が必要かもしれません。
↑わかりやすいスポットライトの例。演者との位置関係や光量によって描く絵は様々。演者によって遮光されて変化したりする。


●レーザー


 運営や箱のある種のこだわりや趣味によって展開される特殊光。難点はレーザーを立てるためにミストが多めだったり他のライティングが控えめだったりすること。それでもうまく撮れれば通常のライティングとは全く異なる画を描く。魚眼などを使うと光が曲がったりなどしてまた一興でもある。ただレーザーが主役になってメンバーがあんまり見えないので運営の自己満足になりがちではあります。
↑ミストが強いので自然とふわっとした仕上がりの写真にはなる。レーザーとの位置関係(手前か後ろか)などでいろいろ遊べる。背景の模様に見立てて画角を組むと楽しい。



●多重露光


 バンドライブ写真では定番アプローチの一つ。本稿では番外編と言えるアプローチ。すなわち光がないならば入れてしまえばいいじゃない戦術。別撮りしておいたライティングのみの写真に重ねてしまう。この時に、SS1桁、露出を極限までマイナスにした上で、光に向けてカメラを揺らすように撮って光自体に動きをつけると画面全体の躍動が出る。(これは動かざること山のごとしな駆け出しバンドのライブ写真に動きをつけるテクニックの一つで最初からダンスが主体のアイドルライブ写真ではそんなに必要性は高くない)カメラの多重露光機能を使ってもできるが実際には都合良くレイアウトするのはかなり難しいのでアプリとか使っちゃうのも手。
↑グラフィカルだが需要は謎。こんな手を使わなくともライブアイドルはそもそも美しく撮れる。ものすごくどうしようもない時、例えば後方で広角しかなくてやることない時、などにトライするも一興。

 

 大きくわけると上記の光の時を意識的に狙っていくと撮れ高のバリエーションが増えます。ライブ中にレンズチェンジすることは可能ではありますが、実際はなかなか難しいことも多いでしょう。どうしても画角が単調になりがちな部分を補うことができます。


 それ以外の瞬間は暗かったり、判然としなかったりして闇雲にとってもなかなか良い一枚にはなりません。光と演者の立ち位置を把握し、最良の位置関係を常に狙うのが大切です。ポイントは強い光源がしっかり被写体を捉えているかどうか。その瞬間にシャッターを確実に切れば機材自体のスペックが足りなくても確かな一枚を押さえやすいです。
 
 ただし実際見るとわかるとおり光は常に明滅し、様々に色彩を変えていくものなので、その周期パターンにあわせてシャッターを切ることも重要になってきます。繰り返しの明滅があるならばタイミングを合わせて切ることもできます。諦めずに一瞬の光を狙う姿勢が大事です。
 

 では逆に撮りにくい、撮っても成果が得にくいライティングはどのようなものでしょうか?次章、似たような光であっても良い効果が生まれにくい光について考えてみます。



●カラーライトと色の恒常性問題


 たとえば、郵便ポストがあるとしますね。昼のポストと夜のポスト、それぞれの写真があるとします。この時にそれぞれのポストからカラースポイトで赤色をピックアップしたら当然ですがそれは同じ赤ではありません。ですが双方の写真を見て「あれ?ポストの色って変わったのか?」と思うでしょうか?たぶん思わないはずです。いたらちょっと…引きます。

 これはポストという決まった色のものだから、というのもありますが、実は人間は日常の中で目にする様々なものが光の強さ、あるいはそれこそカラーライトで照らされていたとしても、同じ色であるのか、色そのものが変わったのかを見極める能力があります。朝昼晩、天候や照明、あらゆる状況でカラーコード的には明らかに違う色なのにそんな風に感じて生きてる人はいない。これを色の恒常性と言います。よく考えるとすごい能力ですよねこれ。

 ライブにおいても同様で実際には様々な色の光が演者を照らし、その肌色は大きく違うにも関わらず、観客は本来の肌色を脳内で補完しながらなんの違和感もなく鑑賞しているはずです。これは動画においても同様でしょう。

 しかしながらある程度、連続しているものとしてみている時には人間の色彩恒常性維持機能はかなり強く働きますが、写真のように一部だけを切り出した場合には話が別です。撮影者本人、あるいはその現場にいた人、同じアーティストをよく見ている人はある程度それが機能しますが、そうでない人が客観的に見た場合、それは単純に肌色が美しくない写真に見える(肌色じゃないように見えるという意味ではなく)可能性が高まります。

 ゆえに、特にアイドルを撮影する場合には色の恒常性が保たれるバランスの色調の写真をまず基本とすることが非常に重要になるわけです。
↑写真の良し悪しとは別の次元の話だがこういうのばかりでは演者を魅力を伝え切ることはできない。


●肌色から遠い色ほど美しく見えない


 肌色と補色関係にある青や紫、あるいは緑といった色彩が肌を全面的に覆ってしまってる場合。あるいはそうでなくてもそれらの色と肌が混色状態になっている場合。これらは一般的にあまり美しくは見えません。見えないのでゾンビとかピッコロ大魔王とかそういう存在の肌色として使われています。

 現像時に寒色系にホワイトバランスを調整することと、最初から青い光が当たっていることは全く別なのです。これらの色の光は明るさ自体も抑えられてしまうため、暗さも相まってメリハリのない写真になってしまうことも少なくないです。特にブルーライトはその暗さゆえに肌がオレンジ色に転びやすく、なかなか綺麗な写真にはならないでしょう。

 こうしたカラーライトが強く展開している時間の写真は頑張って撮影しても、なかなか良い写真にハマることは難しいです。もちろん、自分が行ったライブの記録としては十分意味があるのですが、重点的に狙って撮っても良い結果を得られにくいということです。それでもその瞬間にいい表情や良い構図が撮れることは少なくないのですが、そうした場合は現像時に限りなく補正したりして恒常性維持機能が発動するバランスまで調整することで救済できることもあります。いわゆる色かぶり補正というものです。

方法としては…

●補正した色と補色方向に色合いやホワイトバランスを倒してみる
●思いっきり暖色に倒す
●自然な彩度・彩度を落として色味の存在感を抑えて慣らす(唇だけ彩度を戻すことで肌の彩度を下げても自然に見える裏技もあります)
●Lrの「混色」から色域別に彩度や輝度を落とす

 当然これらで全て対応できるわけではなく、より細かくレタッチをかけることで回避できる場合はありますがよほどでない限り、その時間は有効ではないでしょうし、もちろん色被りしてるからダメな写真ということではありません。ライブの情景写真としては全然ありでしょう。何を目標に撮るか、と深く関わりますが、被写体の魅力を最大化して伝える、という観点からするとベストにはなりにくい、ということですね。

   ただしそうしたライティングも大前提としてグループの雰囲気や曲調に合わせて調整されているもの、そうした文脈が広く共有されている人たちに向けて発信したり、インパクトのある写真に仕上げるという意図を持ってやる中ではこうした色調ももちろんアリです。写真の良し悪しとは別次元の話であることは再度強調しておきたいところですね。

 もっとも有効な救済手段はモノクロ写真にしてしまうこと。これならば、表情や雰囲気だけを抽出した写真になります。
↑モノクロ化することで色被りは無視して写真そのものに写ってる表情だけ伝えることができる。
↑ライブ自体の熱量を伝える意味でもそもそも暖色系にチューニングするのは相性はいい。紫や燻んだブルーなどパッとしない色調のときは暖色系に。肌色に近い色は違和感を感じにくい。
↑色被りの中でもレッドライトは肌色に近いこともあって、恒常性が破綻しにくい。
↑こういうわけのわからん光はいっそ堂々とバキバキに発色させてみるのも一つ。ただこれもレッドライトの存在が大きい。


●ライティングを構図に積極的に取り込む


 写真における「ライティングを写す」という行為には2種類あります。一つは光源そのものを写す。もう一つは光源が作る光芒を写す。いずれもしっかり立てるには現像処理などで手をかけてあげる必要がありますが、とはいえ最初から画面に入っていなければ意味はありません。

 光源は一定の規則性をもって存在しますし、光芒は直線的で画面をダイナミックに見せてくれます。
 
 これらを意識的に構図に取り込むにはシャッターを切るときに、そこに光があることを意識していなくてはなりません。いえば簡単ですが、実際は撮ってると被写体に集中しがちで見えてないことが多いものです。

 光源、光芒と被写体が一つのフレームの中で意味をもって並ぶ時、バストアップの写真であっても非常に美しくドラマティックな写真とすることができます。先にも書いたように情感は色と色彩に宿ります。光を画面に取り込むことはそれだけで非日常レベルをあげられるのです。
 
 そのためにはある程度、ステージのライトの位置を把握しておく必要があります。どのくらいの光量があり、どのくらいの数があるのか。またどのような画角にすれば取り込めるのか。
 
 当然、ライトの多くは天井付近にありますので、これを画角に取り込むにはある程度の広角が必要、というのも間違いではないですがズームのアップ写真でもきっちり入れる方法があります。それはちょっとかがんで煽り気味で撮ることです。かがんで怒る人はいないのでマナー的にも優しいですね。ものすごいガラガラだったら座っちゃうまである…まあこれはへんに目立つので勧めませんが。これにより、通常では入らない上方の光を画角に取り込みます。
 
 ライブ写真で撮影者がコントロールできるのはカメラと自分の姿勢だけです。上下左右、ちょっと動くだけでも光のレイアウトへの影響は大きい。フレームは全身で動かします。
  
 光芒に関していうとある程度のサイズのライブハウスに関してはミストの量にもよりますね。これが多すぎるとそもそも撮れないので難しいのですが、ほどほどにコントロールされている箱は良い箱です。ここでチェックしてほしいのはミストの噴射口です。噴射した瞬間は部分的に濃いミスト領域ができ、光芒が映えやすく、かつミスト自体のゆらぎがあるので背景に動きが出ます。

 光芒を立てる現像の方法、レイアウトの構図の考え方は#1#2参照してください。

 ライティングを含む、背景をレイアウトに取り込むことを覚えると写真は俄然楽しくなります。ライブは一期一会と言いますがそれでも同じグループで数を重ねていけば同じような写真ばかりになってしまう、そんな時に有効な手段ではあります。

 しかしながら背景面積が増えればメインの被写体である演者の姿は小さくなっていく。ライブフォトに期待される機能として「肉眼よりも寄って見える」という部分のウエイトは大きいため、情景により過ぎた写真はSNSの掲出サイズでは目立ちにくいというのはあります。バランスよく撮り分けるのが(応援をゴールとするなら)望ましいと言えるでしょう。
↑逆光を背に逆三角形上の光芒を取り込むことで引いて撮った被写体にフォーカスする。
被写体の腕のラインと光芒のラインが重なる瞬間を狙う。全体としては対角線状にエネルギーなラインを描きつつ、背中から抜ける光によって動きを強調する。
↑逆光を狙うとリング状のフレアが出ることを逆手にとって被写体を囲うような光に…って部分は偶然ですが被写体とマイクの上部に大小の光源が入るようにレイアウト。
↑光の道へ向かうようなレイアウト。後ろ姿でもドラマティックなイメージを託すことができる。
↑被写体の視線とバックライトの配置を同期。歌が届く先に光を置くことで情感を強化する。
↑背中に光を背負った形。あえて被写体を中心から外して取り込んだ。地下のライブハウスは光を追い、光を背負うそんな戦場だ。
↑光芒のちょうど隙間に被写体を配置。シャドー部分に被写体がいることで存在感を意識させる。
↑光源に向かう後ろ姿。ライブの一シーンに過ぎないが演者の未来を暗示するように。
↑光源を完全に被写体で被せて漏れる光を後光効果に。三角形状の光が顔へと視線を誘導する。
↑被写体の動きと光芒をシンクロ。全体で迫力のある画面を作る。
↑頭上に星座状にお椀型で囲む。星や星座に見立てて撮るのも面白い。
↑歌と光のシンクロ。光は常に何かに見立ててみる。視線だったり歌だったりのエネルギーの流れをビジュアル化する意識でレイアウトするとは画面全体がパワフルに。


●補色や反対色を意識して光の色を立てる


 どちらかというと現像時の話です。背景をブルー系に落とした時に、どこまで落とすか。自然な肌色に止めることが第一の基準ですがそれ以外にもベースの基調カラーと補色関係にある色が残るような調整する、とポイントが際立った写真になります。

 シンプルな例でいえば、金髪に近い髪色の子であれば髪色の印象はしっかり残して調色する。そうすると画面の中で補色関係の色彩が残り、鮮やかな印象を与えます。色調を全部同系統に揃えれば良い、というわけではなく、反対色をきちんと残すのも大事です。
↑背景の光に青みをつけつつ、ピンク髪が立つポイントを狙う。対称的な色を配置することで主題カラーを強調。
↑こういうライティングだったと言わればそうだが現像あるあるとしては実際のライティングのカラーとは全然違うというのはよくあること。赤と青のバランスは調整で大きく変えられるので全体バランスよくなるように調整。
↑髪のグリーンとレッドバックが程よくなるバランスを目指して色域ごとに微調整。
↑実際にはプレーンだった光に青みをつけてコントラストを高めている。


●現像は茹でた素麺を氷水でシメる作業

 写真の基本は一番伝えたい要素を絞り、そこに目がいくようにすることが大事です。基本的には構図のコントロールがその第一歩ですが色調のコントロールでも要素を絞ることができます。

 たとえば伝えたい主題が人物である場合、人物以外の要素とコントラストをつけることで目立つようにするテクニックがあります。人間の肌色は暖色です。全体を寒色に振っても根本的には暖色であること自体は変わりません。背景から暖色要素を抜くことで人物の肌色の背景に対するコントラストがあがり、目が人物に自然と集中できるようになります。もちろん伝えたい主題の目的によってはこれが常にベストとは限りません。

 また黒レベルをあげて曖昧な光を低減すること。これも画面全体を引き締めて主題に集中させる効果が期待できます。
↑現像編でも使った写真。色味だけの影響ではないがフラットな写真から人物に目が行きやすい形にした調整。


●まとめ

 現場で光を見てショットの瞬間を狙うこと、意図的に入れた光を最大化するために現像処理をすること、この両輪を行えばきっと情感ある写真を作れます。そうしたことが誰でも行える(たとえスマホでも)ような時代になったことと、インスタなどの写真投稿型SNSの隆盛は無縁ではないでしょう。「インスタ映え」などと言う言葉ができて久しいですが、実体験を疎かにして(頼んだ飯を食わないとか)写真を優先する姿勢はともかくとして、伝わる写真に仕立てる技術として決して侮れる要素は一つもないと思ってます。もちろん好みはそれぞれですが、「誰に」「何を」「伝えたい」のか?撮るべき要点を明確にする過程には、整理された光と色が織りなす情感は欠かせません。


 ライブ写真ほど様々な光を一気に体験できるジャンルは多くはないです。被写体の魅力にたくさん酔いつつも、空間を照らし出す光と色についてもぜひ楽しんでいただきたいです!


Special Thanks 

最高の瞬間をくれた、ステージの上の貴女たちに。

カミヤサキ(GANG PARADE)
ユメノユア(GANG PARADE)
ヤママチミキ(GANG PARADE)
ココ・パーティン・ココ(GANG PARADE)
月ノウサギ(GANG PARADE)
ハルナ・バッ・チーン(ex.GANG PARADE)
アヤ・エイトプリンス(ex.GANG PARADE)
星熊南巫(我儘ラキア)
榎本りょう(WILL-O' )
桐乃みゆ(WILL-O' )
小森うずら(WILL-O' )
YOSHIDA SODA (ex.HAMIDASYSTEM)
MITSUI AMEBA (ex.HAMIDASYSTEM)
HASEGAWA BEET (ex.HAMIDASYSTEM)
KOYAMA FLAME (ex.HAMIDASYSTEM)
AMEBA(クロスノエシス)
FLAME(クロスノエシス)
LAKE(クロスノエシス)
小田彩美(魔界)
瑳里(ex.NECRONOMIDOL)
月日(RAY)





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